鼓動、千々に

闘病記。あした天気になあれ。

手術

30日、遂に手術の日がやってきた。少し早く来てくれた夫と3日ぶりの談笑を楽しんでいたら、あっという間に予定時刻になってしまった。私、夫、看護師さんの3人で病室を出た。手術室がある地下までエレベーターで降りた。少し空気がひんやりしていて気持ち良かった(病室はいつも少し暑い)。はじめに、夫が家族待合室へ行くために別れた。じゃあ、また!と笑顔で手を振る。看護師さんと手術室の前まで向かい、別れた。行ってきます!と頭を下げる。

手術室に入る。病室の明るさが暖色なのに対して、手術室は青白く明るい。清潔感と神聖さを感じた。手術台に横になって、手の甲に点滴の針を刺された。めちゃくちゃ痛かった。今回の手術は全身麻酔で、そういうことは麻酔が効いてからやるものだと思っていたので嘘だろと思った。動転していると口に酸素マスクをつけられ、深呼吸するよう指示された。しばらくぼんやりしてきますよ、と言われ、え?特に何ともないんだが?と思った瞬間、視界が歪んだ。何とか耐えようと思ったが、逆らったら気持ち悪くなりそうな予感がしたので諦めた。この間約1秒。

明転。気付くと病室に戻ってきていた。夫が見えた。ああ、手術が終わったのだと悟った。周りで人が動いていて、音は聞こえる。私に何か訊いてきているし、答えている気でいるけれど、どうやら上手くできていないらしい。麻酔がまだ残っているんだろうから諦めてくれと思いつつ、何度か同じやりとりをして事なきを得る。そのあとすぐ、眠りについてしまった。

その日の夜から食事ができるとの事で、配膳で目が覚めた。まだ自力でベッドから起き上がることはできない。ベッドのリクライニングを非常に浅い角度に起こされ、はいどうぞ食べてください、と言われた。何を言われているのか分からなかった。いやいやこれは人が物を食べる角度ではないでしょう。と腹が立ったし不貞腐れた。今書いていて気付いたのだけれど、私は今(この今というのは、がん治療が始まってからのことだけれど)不貞腐れているのだ。あまりの不自由さに、不健康さに、何をする気にもなれないでいる。これは鬱だと思っていたけれど、単に不貞腐れているだけのように思う。だからと言って何が変わるわけではないけれど、不貞腐れの方が幾分元気があるように感じられて良い。その後は結局ご飯を食べずに寝てしまった。

術後1日目(入院5日目)。看護師さんに見てもらいながら少し歩いた。痛みもなく安心。あと10日ほどの入院になると聞き、しょんぼりする。

術後2日目(入院6日目)。少し歩いた。起き上がるのはまだ少しつらい。圧迫のために膣に詰めたガーゼを抜いた。貼り付いていて痛かったが、すぐに治まった。  暇つぶしは、SPY×FAMILY。アーニャちゃんかわいい。

術後3日目(入院7日目)。ドレーンとフットポンプが取れ、解放感に喜ぶ。院内を歩くのは自由とのことで売店へ行く。良い気分転換。昨晩飲んだ下剤がようやく効き、お通じが。傷に触れると大変なのでとても心配。麻酔による喉のイガイガもようやくなくなった。 暇つぶしは、NARUTO。27巻分無料ってすごい。料理が得意な一般男性の動画に登場するワード、ああこれか!というものが出てきて嬉しくなる。

術後4日目(入院8日目)。シャワー解禁。点滴の針を保護するため、左手にはビニールを被せている。右手だけしか使えないのは不便だった。恐る恐る創部を泡で洗ったが、滲みたりもせず安心。 暇つぶしは、引き続きNARUTO。ラーメン食べたくなるなあ。

術後5日目(入院9日目)。唯一の同居人が退院したので、個室状態になる。贅沢気分。その人には大変よくしていただいたので寂しくもある。私の退院は...まだまだ先だったので考えるのをやめた。手術時に入れた手の甲の点滴が寿命を迎えたので、他の場所に挿してもらうことに。看護師さんがめちゃくちゃ頑張ってくださり、なんとか移設完了。なんと同い年とのことで、本当に頭が下がるというか自分が情けないというか...  暇つぶしは、またまたNARUTO。無料分をようやく読み終わる。太っ腹な集英社に感謝。

術後6日目(入院10日目)。尿道の横あたりから若干の出血。傷口付近に鈍痛が。不安だが先生がお休みなので、明日診てもらうことにする。そして入院は10日目に。長い長い。 暇つぶしは、善悪の屑と外道の歌。切って縫って丁重に看護されている身としては、ひええって描写ばかりなんだけど、つい読んでしまう。

術後7日目(入院11日目)。早朝に先生が診察してくれた。化膿はしていないが、尿道カテーテルと抗生剤の点滴の延長を即決された。無念。でも弾性ソックスは卒業。すっきり。 暇つぶしは、THE ALFEEの動画。ライブかっこいいしMC面白いし料理はちゃめちゃだしもう大好き。

術後8日目(入院12日目)。じゃっっっっかん、痛みは少なくなったが、抗生剤は継続。周りの住人(?)の入れ替わりが激しい。入院が短くて羨ましい。皆、手術を受けるための入院だけれど、聞こえてくる話だと全員が良性。またも羨ましく、いや恨めしくなり負の気持ちが増幅する。傷の治りが悪いらしく、退院が見えないと言われ落ち込む。そして同室の人達が退院のお迎えに来てもらっていたり手術の付き添いの話をしていたりで、寂しさがピークに。このコロナ騒ぎで原則面会禁止、例外として洗濯物の受け渡しで10分くらいは許可されているものの、洗濯物は院内のランドリーサービスを利用するから面会には来ないでと言っている。夫の安全が大事。が、正直かなり寂しい。午前中はずっと独りで泣いていた。メンタルが限界を迎える。 暇つぶしは、いろんな人の闘病ブログ。みんな頑張ってるんだなあ。と自分を奮い立たせる。

術後9日目(入院13日目)。朝一番におしっこの管を抜かれた。痛いかな?と思ったら1秒程、ちょっと嫌な感じがあっただけで終了して拍子抜け。おしっこが傷にしみるかも、と言われていたのでビクビクしていたが大丈夫だった。解放感はあるものの、おしっこするたびに洗浄、ガーゼの張り替えを自分でしなければならないので面倒くさい。 暇つぶしは...これと言ったものはなくネットサーフィン。

術後10日目(入院14日目)。滲出と出血がだらだらと続いている。果たしてこれは止まるのだろうか。4人部屋が満床となった。看護師さんが〇〇さーん!××の時間でーす!と割と大きな声で常に誰かしらの元を訪ねてくるため、静かな時間がほとんどなくなった。あと、隣の人の生活音がとてもうるさい。咳、くしゃみ、音漏れに笑い声、何かを食べる音、一挙手一投足が雑なんだろうか、常に何かの音を発し続けている。夜になったら鼻歌まで!!元気じゃん!と思うし腹が立つ。 暇つぶしは、腸よ鼻よ。明るく楽しく描かれてるけど、壮絶な闘病記。作中にあった「鼻に薬の匂いが突き抜ける」が分かりすぎる。先生も言ってたけど、珍しい部類らしい。

術後11日目(入院15日目)。滲出と出血の具合は相変わらず。傷の下側1/3はもうすぐ抜糸ができそうで、残りはもう一歩かな...という感じらしい。下側1/3は皮膚&皮膚で同じ組織同士を縫い合わせているため馴染みが早く、残りは皮膚&粘膜と皮膚の中間の組み合わせなので時間がかかるということだ。とはいえもう月の半分入院してるのか...という感じで溜息しか出ないので、早く退院したい。切実に。向かいと(頭のおかしい)隣が退院したので平穏が訪れると思いきや、我儘な患者が向かいに入った。退院があったベッドは、その日のうちは空きになるのがお決まりだったのに...!クセのある患者と看護師さんのやりとりが耳に入るのは思ったよりストレスなんだよなあ...早く退院したい。切実に(2回目)。 暇つぶしは特になし。

術後12日目(入院16日目)。相変わらずダラダラと続く滲出と出血。諦めと苛つきが入り混じった気持ちになる。昨日くらいから些細なことで苛つくようになってきた。もともと短気な性格ではあるが、長引く入院とコロナのストレスが相当溜まっている。看護師さんに対してかなり愛想良くしているのだが、本来私は愛想のかけらも無くコミュ障を拗らせている人間で、相当に無理をしている。感謝の気持ちはもちろん本物だし、大変なお仕事をされているのは重々承知だから、なるべく気持ちよく手間なくお仕事をしてもらえたらという思いがあるのだが、申し訳ない、気力が追いつかなくなってきた。ナースコールから1時間近く待ちぼうけをくらって、もちろん看護師さんの怠惰でそうなったわけではないのは百も承知なんだけど、さすがにキレそうになった。退院予定も毎回毎回延びていく。毎回毎回言うことが変わる。上げて、落とされる。心が限界。 暇つぶしは特になし。

術後13日目(入院17日目)。よせば良いのに病気について検索してしまった。暇すぎるのが悪い。そして予後が悪いだの生存率が低いだの、悪い情報ばかり出てきて耐えきれず泣いてしまう。手術や抗がん剤放射線治療など、つらく苦しい治療を終えた後でも、再発に怯えながら生きなければならないなんて。それ以前に、治療を完走できない可能性だって大いにあって...その事実に、押し潰されそうになる。 暇つぶしは特になし。

術後14日目(入院18日目)。朝の診察で治りが良い1/3部分について、「抜糸しちゃおうか」と軽いノリで言われる。てっきり次の日だと思っていたので、先生が抜糸のための道具を手にした時に「今ですか!?」と驚く。が、縫い方が連続縫合というもので、1箇所抜糸すると全部糸が取れてしまうため、残り部分の回復を待って抜糸をすることに。 暇つぶしは特になし。

術後15日目(入院19日目)。傷の具合は相変わらず。隣と向かいが機械を使って点滴を落としているのだが、この機械の警告音(気泡が入った、点滴が終わった...など、事あるごとに鳴る)がひっきりなしに鳴っている。私も抗がん剤で入院していた時に使っていたので(そしてまたお世話になるのだが)、この音はちょっとトラウマなのである。それが予期せぬタイミングで、結構な音量で頻繁に鳴っている...精神的に非常によろしくないので、耳栓生活となる。これはこれで結構ストレス。 暇つぶしは...本当にネタがないので困ってる。

術後16日目(入院20日目)。2/3を抜糸。怖すぎて魂抜けた。見えないところなので、い、今抜けてるんですか?(震え)とビビり倒していると、看護師さんが順調ですよーなどと声掛けをしてくれるようになった。とてもありがたかった。治りが悪い1/3を残して終わろうとしたが、残りもいけちゃいそうだねー、やっちゃおうか!と軽いノリ。え!?大丈夫なんですか!?と慌てると、じゃあ明後日にするかな、どっちでもいいですよー、と。不安なので明後日にしてもらう。退院の目処もついたし、1日や2日変わらない程度まで回復したということなのだろうか。まだガーゼに血ついてるんだけど、いつ止まるんだ。 暇つぶしはTHE ALFEE。レジェンド。

術後17日目(入院21日目)。放射線治療の説明を受ける。副作用が多くて辟易する。加えて身体に書かれた印が消えないようにするとか、貼られたテープを剥がさないようにするとか(膝部分が既に半分剥がれた)、面倒ごとが多い。入浴できないのが悲しい。毎日の通院もこのご時世怖い。 暇つぶしは特になし。

術後18日目(入院22日目)。残り部分の抜糸。粘膜部分なので治りが悪いらしい。が、抜糸は終了。吸収糸?が1本露出したためそれも抜いたが、これがものすごく痛かった。滲み出しが少し増えると思う、という言葉通りガーゼに付く血の量が増えた。本日入院最終日。果たして大丈夫なのだろうか。次回の外来までに治ってくれ... 最終日はなんだかあっという間で、暇つぶしは特になし。

 

というわけで22日間の入院でした。約3週間ですか...長かったなあ... 退院した日は、数年に1度の大雨と言われるほどの土砂降り。なんでよりによって退院日かねえ。

ともあれ、これでまた一山超えた感がある。次は放射線治療。平日は毎日通院...このご時世で毎日電車に乗るなんて、怖すぎておかしくなりそう...最新の注意を払いつつ、がんばるしかないね。

 

↓入院時のあれこれ↓

ベッドテーブルが標準装備ではなく、しかも数が不足しているとのことで術後2日目には回収されてしまった。f:id:hapimi:20200404142459j:image起き上がるのがまだしんどい時期だったので、食事に苦労したし、身の回りのものを近くに置けなかったのは本当に不便だった。眼鏡や体温計など細々としたものは枕周りに置いているんだけど、ベッドの隙間から落ちてしまい、運が悪いとベッドの下に入り込んで取れない...なんてことも。どうにかならないものかとAmazonを検索していたらこんな便利グッズが。f:id:hapimi:20200404143117j:imageベッドサイドポケット。細々としたものを一括収納!できるナイスな一品。これからの抗がん剤での入院にも役立つはず。

長い入院の中、一番テンション上がった食事。天ぷら。f:id:hapimi:20200411085954j:imageでも、天ぷらにご飯って...合わないね笑

焼きそばも出ました。f:id:hapimi:20200414155557j:image青のりに紅生姜...細かいこだわりが嬉しい。